組織再編や株式併合の際の買取請求で問題になるもの。
趣旨:組織再編が無かった場合の経済状況を確保するとともに、組織再編により企業価値が増加する場合にはそれを分配することで、株主に一定の利益を保障する。
1.組織再編により企業価値が変わらないor下落
「公正な価格」:組織再編がなければ基準時に株式が有していた価格(ナカリセバ価格)
2.組織再編により企業価値が増加
「公正な価格」:企業価値の増加分(シナジー)を適正に分配したならば基準時に株式が有していた価格(シナジー適正分配価格)
Q.その算定方法は?
⑴当事者が互いに独立した関係にある場合
あえて自社の株主に不利な条件で組織再編を行うとは通常考えにくい。
→取引過程に不適切な点がない限り、実際に決められた条件が、シナジーを適正に分配したものと考える。
⑵当事者が互いに独立していない場合
利益相反関係にあるため、一方の株主にとって不利益な組織再編がなされるおそれがある(MBOなど)。
→ア)組織再編が、独立当事者間でなされた取引と比肩しうるような公正な手続を経ているといえる場合、実際に決められた条件を公正価格とみる。
イ)手続が公正であるとは言い難い場合、裁判所が自ら公正な価格を算定すべき。
Q.基準時は?
⑴組織再編を承認する総会決議の日
決議日と買取請求権の行使日には一定の間隔が空く。
→株主としては、決議日以降に株価が上昇するなら市場で売却すれば良いし、下落すれば買取請求をすればよい。
つまり、会社や他の株主の負担により、本人はプット・オプションを無償で得るのと同じ経済状態になるといえる。
⑵買取請求権の行使日(判例)
買取請求権の行使により、当事者間に売買契約が成立したのと同様の法律関係が生じるから。
他方で、請求権の行使日ごとに「公正な価格」の算定を行わなければならないというデメリットも。
⑶買取請求権の行使期間の満了日
請求権行使後の株価変動のリスクを反対株主に負わせることになる。
他方で、「公正な価格」の算定は一度で済む。また、株価変動のリスクといえども、最大20日間(※1)の変動リスクであるし、株価の上昇もあり得るのだから必ずしも不利益ではない。
(※1)株式買取請求権の行使期間は、組織再編等の効力発生日の20日前から前日まで。